ミトコンドリアとは?|科学的に認められた“ミトコンドリアを増やす10の方法”を専門家が解説

【この記事でわかること】

  • ミトコンドリアの役割が「簡単」に理解できる
  • ミトコンドリアが増えると体がどう変わるかが分かる
  • 科学的根拠に基づく“ミトコンドリアを増やす10の方法”が分かる

私は医療系運動指導士として病院やスポーツジムで活動しています。

  • 「疲れやすい」
  • 「最近エネルギーが足りない気がする」
  • 「もっと元気に動きたい」

そんな悩みを解決するカギを握っているのが、細胞の中にある“ミトコンドリア”。

ミトコンドリアは体のエネルギーをつくる工場のような存在で、ミトコンドリアが元気になるだけで、

  • 疲れにくくなる
  • 痩せやすくなる
  • 若々しさまで向上する

ことが最新の研究でわかっています。

この記事では、ミトコンドリアとは何かを「できるだけ簡単に」解説した上で、今日からできる“科学的に認められたミトコンドリアを増やす10の方法”を紹介します。

目次

ミトコンドリアとは?

ミトコンドリアは、細胞の中にある エネルギー工場 のようなものです。

私たちが食べた栄養素と酸素をつかって、ATP(生命エネルギー)をつくる場所 して働いています。

特に、

  • 筋肉
  • 心臓

など、たくさんのエネルギーを必要とする部位に多く存在します。

つまり、ミトコンドリアの働きが良くなると、

  • 体が疲れにくくなる
  • 代謝が上がる
  • 集中力が向上する
  • 肌の調子も整う

という、健康に欠かせないメリットが得られます。

ミトコンドリアを増やすために大切なポイント

ミトコンドリアは、ただ栄養をとるだけでは増えません。増えるためには “刺激” が必要 です。

特に重要なのは次の3つです・

① 運動による刺激

筋肉が活動すると、ミトコンドリアのスイッチである PGC-1αがオンになり、新しいミトコンドリアが生まれやすくなります。

PGC-1α(ピー・ジー・シー・ワン・アルファ)とは、体の中で 「ミトコンドリアを増やすスイッチ」 の役割をしているタンパク質です。

運動や寒冷刺激などの“ちょっとした刺激”を受けると、このスイッチがオンになり、新しいミトコンドリアをつくる指令を出します。

② 栄養・食事で材料を整える

ミトコンドリアは複数のビタミン・ミネラル・アミノ酸からできているため、「材料」が不足すると正常に働けません。

③ 修復のための睡眠・休息

睡眠中はミトコンドリアの修復が進み、古いものと新しいものが入れ替わります。

つまり、運動 × 栄養 × 睡眠 の3本柱がそろうと、ミトコンドリアが最も増えやすくなります。

科学的に認められている“ミトコンドリアを増やす方法”10選

インターバル速歩(速歩とゆっくり歩きの交互運動)

インターバル速歩は、速歩(息が弾むレベル)と、ゆっくり歩き(回復ペース)を交互にくり返す運動法 です。

速歩によって筋肉に「少しきつい負荷」がかかり、ゆっくり歩きで回復しながら再度刺激が入るため、ミトコンドリアを増やすスイッチ PGC-1α が効率的に活性化されます。

インターバル速歩のポイント

  • 速歩:3分(息が少し弾む速さ)
  • ゆっくり歩き:3分(呼吸を整えるペース)
  • 上記を5セット(合計30分)
  • 週4〜5日できると理想的

時間がない日は「速歩1分+ゆっくり歩き1分 × 5セット(10分)」でもOK。早歩きは大股で歩くと効果的。

インターバル速歩は運動が苦手な方でも続けやすく、ミトコンドリア活性には非常に相性が良い

インターバル速歩のより詳しい方法は下記の記事で紹介しています!

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筋トレ(レジスタンストレーニング)

筋トレは、ミトコンドリアを増やすための最も強力な方法の一つです。

特に、大きな筋肉を使うトレーニングは酸素需要が高く、ミトコンドリアのスイッチ PGC-1α を強く刺激します。

スクワット

  1. 足を肩幅程度に開く
  2. お尻を後ろに引きながらゆっくりしゃがむ
  3. 太ももが床と平行になる前で止め、ゆっくり戻す
  4. 10〜15回 × 2〜3セット

太もも・お尻・体幹など、大きな筋肉を一度に使う全身運動です。

スクワットを続けると酸素消費が増えるため、ミトコンドリアが活性化しやすい種目です。

カーフレイズ

  1. 壁や椅子につかまり、姿勢をまっすぐ立てる
  2. かかとをゆっくり持ち上げ、つま先立ちに
  3. ゆっくり下ろす
  4. 15〜20回 × 2セット

反復動作によりエネルギー需要が高まり、ミトコンドリアが増えやすい。「ゆっくりかかとの上下」で負荷が入り、ミトコンドリア刺激が強まります。

ヒップリフト

  1. 仰向けで膝を立てる
  2. お尻をゆっくり持ち上げ、肩〜膝が一直線になる位置でキープ
  3. お尻をゆっくり下ろす
  4. 10〜15回 × 2セット

大臀筋は活動量が大きいため、多くのエネルギーが必要なため、ミトコンドリアが活性化しやすい。

反動を使わずに“お尻をゆっくり上げ下げ”がポイント。

低強度の長時間ウォーキング(LSD)

LSD(Long Slow Distance)は、ゆっくり・一定のペースで長い時間歩くシンプルな有酸素運動です。

LSDは、主に脂肪酸をエネルギーとして使う運動です。この脂肪酸を燃やす作業はミトコンドリアが担当しているため、使えば使うほど「新しいミトコンドリアを増やしたい」という反応が起きます。

低強度の長時間ウォーキング(LSD)の方法

  • 会話できるペースで30〜60分
  • 少し息が上がる程度
  • 1日おきに行うと負担が少なく継続しやすい

速さより「時間」を大切に。外で歩く場合は太陽光のメリット(体内時計が整う)も得られる。

寒冷刺激(冷シャワー)

体を短時間だけ冷たい刺激に触れさせる方法です。

  • シャワーの最後だけ冷水
  • 冬の外気に数十秒あたる

など、軽い刺激で十分効果があります。

寒さに触れると、体温を保つために褐色脂肪細胞(脂肪燃焼細胞)が活性化 します。

褐色脂肪細胞の中には大量のミトコンドリアがあり、冷刺激はこの細胞の働きを高めてミトコンドリアの量・活性を増やす と報告されています。

寒冷刺激のポイント

  • シャワーの最後20〜30秒だけ冷水を浴びる
  • 外に出るときに深呼吸して“外気を感じる”でもOK
  • 週3〜5回の軽い刺激で十分

冷たさは“無理ない範囲”で。心臓・血圧に不安がある方はぬるま湯→冷水の順で調整を。長時間の冷水浴は逆効果なので避ける。

ゆっくり伸ばすストレッチ(メカノトランスダクション)

筋肉や腱を 15〜30秒かけてゆっくり伸ばす静的ストレッチです。

ゆっくり筋肉を伸ばすことで、筋肉の中にある“変化を感じるセンサー”が刺激されます。

これが メカノトランスダクション と呼ばれる反応で、細胞内のAMPK→PGC-1αの流れが活性化し、ミトコンドリアの再生・増加につながる ことが確認されています。

太もも後面(ハムストリングス) ストレッチ

  1. 床に座り、両脚を前に伸ばす
  2. つま先を軽く立てる
  3. 背すじを伸ばしたまま、股関節から前に倒す
  4. 太もも裏が伸びるところで止める
  5. 反動は使わず、15〜30秒キープ

背中を丸めず、“骨盤から前に倒す”イメージで行うのがポイント。

ふくらはぎ ストレッチ

  1. 壁に手をついて前後に脚を開く
  2. 後ろ脚のかかとを床につける
  3. 前の膝を軽く曲げ、ふくらはぎが伸びる位置で止める
  4. 15〜30秒キープ

後ろ脚のつま先をまっすぐに向ける。体重を少し前へかけると、ふくらはぎの伸びを感じやすい。

胸 ストレッチ

  1. 両手を後ろで組む
  2. 胸を軽く張り、肩甲骨を寄せる
  3. 顎を軽く上げ、胸の前が伸びるところで止める
  4. 15〜30秒キープ

腕を強く引っ張らない。肩が上がらないように下げ、胸を開くイメージで。

深い呼吸・横隔膜呼吸

お腹をふくらませるように吸い、長くゆっくり吐く呼吸法です。

深い呼吸は取り込める酸素量を増やし、ミトコンドリアがエネルギーを作りやすい状態をつくります。

さらに、横隔膜を大きく動かすことで自律神経のバランスが整い、副交感神経が働くことでミトコンドリアの修復機能も高まります。

慢性的なストレスが続くとミトコンドリアは疲弊するため、呼吸法は“ミトコンドリアの休息”として非常に効果が高い方法です。

深い呼吸・横隔膜呼吸のポイント

  1. 鼻から4秒かけて吸う
  2. 口から6秒かけて吐く
  3. 1〜3分続ける
  4. 背筋は軽く伸ばす

お腹に手を当てると横隔膜の動きがわかりやすい。寝る前に行うと睡眠の質も高まる。

ビタミンB群・鉄・CoQ10の十分な摂取

  • ビタミンB群
  • CoQ10

はミトコンドリアがエネルギー(ATP)を作るための材料となる栄養素です。これらが不足すると、ミトコンドリアが十分に働けず、増えにくくなります。

逆に、これらの材料が整うと、

  • ミトコンドリアを増やす
  • ミトコンドリアが働く

という特性があります。

ビタミンB群・鉄・CoQ10の摂取のポイント

  • B群:豚肉・卵・納豆・玄米
  • 鉄:赤身肉・レバー・ほうれん草
  • CoQ10:サバ・イワシ・牛肉
  • 1日2回の食事に、どれか1つ入ると理想的

運動した日は特にしっかり摂取する。ビタミンB群の摂取は“疲れにくい体づくり”にも直結する。

スペルミジン摂取(オートファジー促進)

スペルミジンは細胞の“掃除作用”であるオートファジーを強く促進します。

オートファジーが働くと古くなったミトコンドリアがリサイクルされ、新しく、質の良いミトコンドリアに入れ替わる ため全体の機能が高まります。

スペルミジンを多く含む、

  • 納豆
  • きのこ
  • 大豆食品

を積極的に摂ることでミトコンドリアの新陳代謝を活性化します。

スペルミジン摂取のポイント

  • 納豆1パック/きのこ料理などを1日1回
  • 無理なく続けられる範囲でOK

良質な睡眠(深睡眠の確保)

睡眠中は、ミトコンドリアの修復酵素が最も活発に働きます。

特に深睡眠(ノンレム睡眠)は、細胞の修復・代謝・ホルモン分泌が最高潮になり、古いミトコンドリアが回復→新しいものが増えやすくなることが明らかになっています。

睡眠不足はミトコンドリア機能低下と直結するため、睡眠は“最高のミトコンドリアサプリ”ともいえます。

睡眠の質を高めるポイント

  • 寝る2時間前の入浴
  • 就寝前のスマホ控えめ
  • 寝室の温度はやや涼しめ
  • 寝る前の軽いストレッチ

特に「眠りはじめの90分」が重要。入浴で深部体温を調整すると深睡眠が入りやすい。

下記の記事では「科学的に認められている睡眠の質を高める方法」を10コ紹介しています。睡眠の質でお悩みの方必見です!

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間欠的ファスティング(プチ断食)

「間欠的ファスティング」とは、一定時間食事をとらない時間をつくり、細胞の回復を促す食習慣です。

食事をとらない時間にはオートファジー(細胞のリセット機能)が活発化 します。

このとき古いミトコンドリアが分解され、新品のミトコンドリアへ入れ替わることでエネルギー効率が大きく向上します。

多くの研究でミトコンドリア改善効果が確認されているエビデンス(科学的根拠)が強めの方法です。

間欠的ファスティング(プチ断食)の方法

  • 12〜16時間の空腹時間を作る(例:夕食19時 → 翌朝11時に食事)
  • 水・お茶はOK

断食は無理のない時間帯で調整して行う。最初から16時間やらなくてOK(12時間でも効果あり)

ミトコンドリアを増やすなら“筋持久力トレーニング”もおすすめ

ミトコンドリアは「長く動くほど働きが高まる」ため、ゆっくり筋肉を使い続ける筋持久力トレーニングと相性がとても良い運動です。

私のYouTubeチャンネルでは、自宅でできる「筋持久力トレーニング」 を配信しています。

まとめ|ミトコンドリアは“少しの刺激”で増える

ミトコンドリアは、

  • 運動
  • 栄養
  • 睡眠

のバランスが整うほど元気になります。

今回紹介した10個はどれも科学的根拠があり、今日から始められるものばかりです。

まずは気になるものを1つだけでもOK。小さな刺激があなたのエネルギーを大きく変えます。

参考文献

  • Hood DA. “Mechanisms of mitochondrial biogenesis…”
  • Little JP. Sprint interval training and mitochondrial biogenesis.
  • Baar K. Muscle adaptations and PGC-1α.
  • Ristow M. Caloric restriction and mitochondrial renewal.
  • Madeo F. Spermidine and autophagy mechanisms.
  • Larsen S. Mitochondrial function and endurance exercise.
  • Sinha R. Cold exposure and mitochondrial activity.
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この記事を書いた人

ご覧頂きありがとうございます。
スポーツインストラクター|健康運動指導士|心臓リハビリテーション指導士|ヨガインストインストラクター|スポーツジム・病院勤務|読書好き|漫画も好き|名言が好き|運動・健康について情報発信|YouTubeでトレーニング動画配信中

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