【この記事でわかること】
- HIIT(高強度インターバルトレーニング)の時間設定が効果に与える科学的な理由
- 目的別(心肺機能・脂肪燃焼・筋力アップ)に最適な運動/休憩時間の比率
- 初心者〜上級者までのレベル別HIIT時間調整のコツと安全な続け方
短時間で脂肪を燃やし、スタミナも筋力もアップできる。そんな「効率最強トレーニング」として人気なのがHIIT(ヒット:高強度インターバルトレーニング)です。
でも実際に始めようとすると、「何秒動いて、何秒休めばいいの?」「目的によって違うの?」と迷う人も多いはず。
この記事では、最新の研究データをもとに、目的別に最も効果的なHIITの時間設定を紹介します。
初心者から上級者まで、自分に合った“科学的に正しいHIIT”を見つけましょう。
HIITとは?短時間で効果が出る理由

HIITとは「High-Intensity Interval Training」の略で、短い全力運動(ワーク)と短い休憩(レスト)を交互に行うトレーニング法です。
たとえば、
- 20秒運動 → 10秒休憩(いわゆるタバタ式)
- 30秒運動 → 30秒休憩(1:1比)
- 40秒運動 → 20秒休憩(2:1比)
このように、「どれくらい動いて、どれくらい休むか」をコントロールするのがHIITの特徴。
時間設定次第で、心肺機能・脂肪燃焼・筋力アップなど効果の方向性が変わるのがポイントです。
HIITはエアロバイクを使っても行えます。単調で飽きてしまいがちなエアロバイクも、HIITを行うことでメリハリつけて行えます。エアロバイクを使ったHIITの方法は下記の記事で紹介しています。

科学的に見るHIITの効果と時間の関係
ワーク時間が長ければ良いとは限らない
研究では、運動時間が長すぎると疲労が蓄積し、後半の出力が落ちることが分かっています。
つまり「長く頑張るほど良い」というわけではなく、全力を保てる時間を繰り返すほうが効果的です。
たとえば、30〜60秒間のワークを1:1比(同じだけ休憩)で行うと、最大酸素摂取量(VO₂max)が効率よく向上するという報告があります(Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2024)。
「もう少しできそう」と感じるくらいで止めるのが、実は最も効果的。
筋肉や心臓は“ギリギリの負荷”よりも、“余力を残した反復”で強くなります。
休憩時間が短すぎるとパフォーマンスが落ちる
HIITの休憩(レスト)は「ただの休み」ではなく、“次の全力に備える時間”です。
レストが短すぎると疲労が残り、フォームが崩れたり、心拍が過度に上がりすぎる危険も。
最新の運動生理学のレビューでは、ワーク:レスト=1:1または2:1が最も安定してパフォーマンスを維持できる比率とされています。
一方、1:2や1:3のように休憩を長めに取ると、より高出力の動作が維持しやすくなります。
HIIT後に「息がすぐ整う人」は心肺機能が高い証拠。
休憩中の心拍数の回復速度(リカバリーレート)は、体力レベルのバロメーターとしても使われています。
目的別に最適なHIIT時間設定(科学的根拠つき)
① 心肺機能を高めたい人向け
おすすめ設定:30秒運動 → 30秒休憩(1:1比)/または40秒運動 → 20秒休憩(2:1比)
なぜ効果的なのか?
心肺機能(=スタミナ)を向上させるには、心拍数を高く保つ時間と不完全な回復が必要です。
30〜40秒間の全力運動は心拍数を一気に上げ、その後20〜30秒の短い休憩で心拍が完全には戻りません。この「高心拍ゾーンを保つ時間の反復」により、心臓や肺が“より多くの酸素を運ぶ力”を鍛えられます。
研究では、ワーク:レスト=1:1や2:1の設定が最大酸素摂取量(VO₂max)の向上に最も効果的とされています(Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2024)。
心肺機能アップの鍵は「息が弾むレベル」を繰り返すこと。“息が荒いが話せる”くらいの強度がベストゾーンです。
② 脂肪燃焼・ダイエット目的
おすすめ設定:20〜40秒運動 → 40〜80秒休憩(1:2比)/または20秒運動 → 10秒休憩(タバタ式)
なぜ効果的なのか?
脂肪燃焼のためには、代謝を高く保ちながら、継続できる強度が必要です。
短めの運動(20〜40秒)をしっかり行い、十分な休憩(40〜80秒)を取ることで、筋肉が疲れすぎず、フォームを崩さずに次の全力を出せます。
これにより、運動後も「アフターバーン効果(EPOC)」が長く続き、トレーニング後も脂肪が燃えやすい状態になります。
タバタ式(20秒運動/10秒休憩)も短時間で高い脂肪燃焼効果が確認されています(Journal of Sports Science & Medicine, 2022)。
一方で、1:2比のように休憩を長めに取ると、強度を維持しやすく、ケガや過度な疲労を防げます。
HIIT後は24〜48時間、安静時代謝が上昇します。つまり、運動を終えたあとも“燃焼モード”が続いているのです。
アフターバーン効果について、より詳しく知りたい方は下記の記事へ!

③ 筋力・瞬発力を伸ばしたい人向け
おすすめ設定:10〜20秒運動 → 20〜40秒休憩(1:2〜1:4比)
なぜ効果的なのか?
筋力や瞬発力を高めるには、「一瞬の最大出力」と「完全な回復」をくり返すことが重要です。
ワーク時間を10〜20秒に抑えることで、筋肉が最大パワーを出せる時間帯を狙えます。
休憩を長め(20〜40秒)に取ることで、エネルギー源であるATP-CP(クレアチンリン酸系)が再合成され、次の全力動作を高い出力で行えます。
研究でも、ワーク:レスト=1:3〜1:4の設定が無酸素能力・スプリントパフォーマンスの向上に効果的と報告されています(Journal of Strength and Conditioning Research, 2019)。
「全力で動けた回数」が勝負。長く続けるより、“短く爆発的に”を意識するのがコツです。
筋肉をつける方法はいくつもありますが、下記の記事では「科学的」に認められた筋肉のつけ方を10コ紹介しています。

レベル別に見るHIITの時間の調整方法
初心者
HIITを始めたばかりの人は、「きついけれどギリギリ続けられる」程度の強度からスタートするのが安全です。
具体的には、「20秒運動 → 40〜60秒休憩(1:2〜1:3比)」を目安にしましょう。
スクワットなど、関節に負担の少ない動作を選び、フォームを丁寧に行うことがポイントです。
慣れないうちは「呼吸を整える時間をしっかり取る」ことが大切。回数も6〜8セットで十分です。慣れてきたら徐々にワーク時間を延ばし、休憩を短くしていきましょう。
HIIT初心者の多くが「頑張りすぎ」で失敗します。筋肉よりも先に“呼吸とリズム”を鍛える気持ちで続けるのが成功のコツです。
中級者
すでにある程度の体力がある人は、1:1または2:1の比率でチャレンジしてみましょう。
たとえば、「30秒運動/30秒休憩」、もしくは「40秒運動/20秒休憩」が目安です。
心拍数を高めつつ、回復が完全ではない状態で次の運動に入ることで、心肺機能と筋持久力を同時に鍛えられます。
合計10〜15セットを週2〜3回行えば、確実に体力が向上します。
HIITを中期的に続けると、「心拍数の回復スピード」=リカバリー能力が向上します。トレーニング後、1分以内に脈が30以上下がる人は、かなり良いコンディションです。
上級者
上級者は、目的に応じて時間比を自由にコントロールできます。
たとえば、「40秒運動 → 20秒休憩(1:0.5比)」、「60秒運動 → 30秒休憩(2:1比)」など、強度を高めて挑戦してみましょう。
ただし高強度トレーニングでは、フォームの乱れや疲労蓄積がケガにつながるため、「限界手前で止める」ことが重要です。
この段階では、パワー系(ジャンプ・スプリント)と持久系(バーピー・スクワット)を組み合わせ、全身の運動効率を最大化できます。
また、トレーニング後の回復(栄養・睡眠)を意識することが、次のパフォーマンス向上に直結します。
「頑張り切る」よりも「最高の1セットを出す」意識を。科学的にも、“質の高い反復”がパフォーマンス向上を最大化することが分かっています。
身体を回復させるにはとにかく睡眠が大事。下記の記事では、科学的に認められている睡眠の質を高める方法を10こ紹介しています!

まとめ|科学的根拠から見るHIITの最適解
HIITは「短時間で効果が出る」トレーニングですが、その真価を引き出すには「時間設定(ワークとレストの比率)」が鍵です。
| 目的 | おすすめ比率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 心肺機能アップ | 1:1(30秒/30秒)または2:1(40秒/20秒) | 持久力とスタミナ向上 |
| 脂肪燃焼 | 1:2(20〜40秒/40〜80秒) | 継続しやすく、代謝アップ |
| 筋力・瞬発力 | 1:3〜1:4(10〜20秒/30〜80秒) | 高出力トレーニングに最適 |
どの目的でも共通するのは、「無理のない強度で、全力をくり返す」こと。
科学的にも、「長くやるより、続けること」が成果を左右する最大のポイントです。
参考文献
- Midgley, A. W. et al. (2024). Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports.
- Tabata, I. et al. (2019). Journal of Sports Science & Medicine.
- García, M. et al. (2019). Journal of Strength and Conditioning Research.
- Frontiers in Physiology (2022). “Effects of different HIIT work-rest ratios on cardiovascular response.”
- BMC Public Health (2025). “Systematic review on HIIT rest intervals and fat metabolism.”


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