【この記事でわかること】
- 副腎疲労とは何か(科学的に正しい理解)
- 副腎の働きを助ける生活習慣とは
- やってはいけない「逆効果な対策」
- しっかり寝ているはずなのに疲れが取れない
- ストレスが続いて、常にだるい感じがする
- “副腎疲労”という言葉を見かけて気になっている
このような状態に心当たりはありませんか。
インターネット上では「副腎疲労」という言葉が広く使われていますが、実はこの言葉には誤解されやすい点があります。
この記事では、副腎疲労を科学的に正しく理解したうえで、副腎に過剰な負担をかけない生活習慣を中心に、科学的に認められている回復法と実践法を紹介します。
副腎疲労とは?

副腎は、腎臓の上にある小さな臓器で、コルチゾールなどのストレスホルモンを分泌しています。
この副腎は、HPA軸(視床下部―下垂体―副腎系)と呼ばれる仕組みの一部として働き、ストレスに対応する重要な役割を担っています。
「副腎疲労」は病名ではない
まず大切な点として、「副腎疲労」は医学的な正式診断名ではありません。
しかし一方で、慢性的なストレスが続くことで、
- ストレス反応が過剰になる
- 回復が追いつかなくなる
- 強い疲労感やだるさが続く
といった状態が起こることは、科学的にも確認されています。
つまり問題なのは「副腎が壊れる」ことではなく、副腎が“働き続けさせられている状態”です。
なぜ「副腎を元気にしよう」とすると逆効果なのか
副腎疲労の情報でよく見られるのが、
- 副腎を活性化する
- 副腎を鍛える
- サプリで元気にする
といった考え方です。
しかし、副腎は筋肉のように鍛えて強くする臓器ではありません。
すでに疲労感が強い状態では、
- カフェイン
- 過度な運動
- 睡眠不足
などの刺激は、かえって副腎に負担をかけてしまいます。
回復に必要なのは、副腎をさらに刺激することではなく、刺激を減らし、回復できる環境を取り戻すことです。
科学的に認められている副腎疲労(ストレス反応)を和らげる方法【10選】
① 規則正しい睡眠リズムを保つ
睡眠リズムは体内時計(サーカディアンリズム)と深く結びついており、この体内時計がコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌リズムを司っています。
就寝・起床時刻が大きくズレる生活が続くと、HPA軸(視床下部–下垂体–副腎系)のリズムが乱れ、疲労感が抜けにくくなります。
逆に一定の睡眠リズムを保つだけで、副腎にかかる負担は大きく減ります。
規則正しい睡眠リズムを保つポイント
- できれば毎日「±1時間以内」で同じ時刻に寝起きする
- 休日も極端に寝だめしない
「何時間寝たか」よりも、まずは起床時刻を一定にすることを優先すると整えやすくなります。
下記の記事では、科学的に認められている睡眠の質を高める方法を10コ紹介しています。ぐっすり眠れずに困っている方必見です!

② 就寝前の強い光・スマホ使用を控える
寝る前の明るい光やスマホのブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。結果として睡眠の質が低下し、ストレスホルモンのリズムも乱れ、副腎に“働き続ける状態”を作ってしまいます。
光環境を整えるだけで、副腎と脳の休息をサポートできます。
就寝前のブルーライトを避けるポイント
- 寝る1時間前から強い光を避ける
- スマホは画面を暗くするか、できれば手放す
「完全にやめる」より、まずは使用時間を少し減らすだけでも効果があります。
③ 朝に日光を浴びる
朝の光は体内時計をリセットし、1日のホルモンリズムを整えるスイッチになります。これにより、コルチゾールの分泌タイミングが安定し、
- 日中の集中力
- 元気さ
- 夜の眠りやすさ
が改善します。副腎が「無理なく働けるリズム」を取り戻せるのが大きなポイントです。
朝日を浴びるポイント
- 起床後できるだけ早く屋外の光を浴びる
- 可能なら窓越しではなく外の光が理想
曇りや雨の日でもOK。人工照明より圧倒的に強い刺激が得られます。
朝日は心を癒す効果もあります。もっと心を癒したい方は下記の記事で紹介している「科学的に認められている疲れた心を癒す方法」をお試しください!

④ マインドフルネス瞑想
マインドフルネスは、
- 考えすぎ
- 未来の不安
- 過去の後悔
から離れ、今の感覚に意識を戻す練習です。
これにより過剰なストレス反応が静まり、HPA軸の過活動が抑えられることが多数の研究で示されています。副腎に対して「ブレーキ」をかける役割を果たします。
瞑想のポイント

- 椅子や床など、楽に座れる姿勢をとる
- 目を閉じるか、半開きで前方をぼんやり見る
- 「呼吸」に意識を向ける(息が入る・出る感覚を感じる)
- 考え事が浮かんだら、「気づいた」と認識し、静かに呼吸へ戻す
- 1〜3分から始め、慣れたら5分程度を目安にする
雑念が出ても失敗ではありません。「気づいて戻る」こと自体が練習です。
下記の記事では科学的に認められている正しい瞑想の方法を紹介しています。正しい方法で行えば副腎も回復します。

⑤ 腹式呼吸・ゆっくりした呼吸法
ゆっくりした呼吸は副交感神経を優位にし、緊張状態を緩めます。
これはつまり「戦闘モード」のスイッチを切ることであり、副腎がストレスホルモンを出し続ける必要がなくなるということです。
腹式呼吸・ゆったりとした呼吸法のポイント

- 椅子に座るか仰向けに横になり、肩とお腹の力を抜く
- 鼻からゆっくり息を吸い、お腹が少し膨らむのを感じる
- 口または鼻から、吸うより少し長い時間をかけて吐く (目安:吸う4秒 → 吐く6〜8秒)
- これを1〜2分、余裕があれば3〜5分ほど続ける
「深く吸おう」と頑張らなくてOK。“ゆっくり吐く”ほうが重要。
目的は、呼吸を通して自律神経にブレーキをかけ、副腎がストレスホルモンを出し続けなくてもいい状態を作ることです。
⑥ 中強度の有酸素運動(ウォーキングなど)
適度な運動はストレス耐性を高め、HPA軸の反応性を健康的な状態に整えることがわかっています。
特に中強度の有酸素運動は、心身の回復力・気分改善・睡眠の質向上に寄与し、副腎の負担を軽減します。
「中強度」は「ややきつい」と感じる程度の運動強度を指します。
中強度の目安

- 息が少し上がる
- 会話はできる程度
- 心拍数のイメージ:最大心拍数の50〜70%
- お喋りする余裕がある
- 運動後に「いい疲労感」を感じ、ぐったりしない範囲
“もう少しできそうだけど、やめておこう” くらいがベスト。
目的は「鍛えること」ではなく、体を気持ちよく動かして、ストレス反応を整えることです。
⑦ 過度な高強度トレーニングを避ける
高強度トレーニングは、身体に「大きなストレス刺激」として作用し、コルチゾールを強く分泌させます。
通常は適応に役立ちますが、すでに疲労が強い状態ではさらに負担を増やす結果になります。回復が追いついていない時期は、あえて抑えることが重要です。
過度な高強度トレーニングを控えるポイント
- 息が上がりすぎる運動は一時的に控える
- 回復できる範囲を基準にする
「休む=サボり」ではありません。回復のための戦略的な選択です。
⑧ 軽い筋トレ(低〜中負荷)
軽い筋トレは、過度なストレスをかけずに、
- 体力維持
- 姿勢改善
- 自己効力感の回復
に役立ちます。体が少しずつ動けるようになることで、副腎が過剰に頑張らなくてもよい状態へ近づいていきます。
カーフレイズ

- 壁や椅子に軽く手を添えて立つ
- つま先に体重をのせ、ゆっくりとかかとを持ち上げる
- かかとをコントロールしながらゆっくり下ろす
- 15回行う
血流が良くなり、「体が動ける感覚」を取り戻しやすくなります。
ヒップアブダクション(脚ひらき)

- 横向きで横になり、下側の腕は枕代わりにする
- 上の脚を上にあげる(脚をひらく)
- つま先を軽く正面に向け、脚をゆっくり持ち上げる
- 痛みのない範囲で上下にコントロールして動かす
高く上げなくてOK。「軽く効く」で十分。
腰がグラグラしないように、お腹を少し凹ませるのがポイント。
ヒップリフト

- 仰向けに寝て、膝を立てる
- 両足は肩幅、手は体の横へ軽く置く
- お尻をゆっくり持ち上げ、体が膝〜肩まで軽く斜め一直線になる位置まで上げる
- 呼吸を止めず、ゆっくり下ろす
腰で反るのではなく、お尻で上げるイメージ。
寝た姿勢でできるため、緊張が強くならず「安心したまま体を使える」優しい筋トレです。
⑨ 十分なエネルギー摂取
極端な食事制限や断食は、身体にとって“ストレス刺激”として働きます。
血糖の乱高下はコルチゾール分泌にも影響し、副腎の負担を増やします。まずはしっかり栄養を入れることが回復の土台になります。
エネルギー摂取のポイント
- 食事を抜かない
- 極端な制限ダイエットを避ける
- 三食摂る
まずは「不足させない」が最優先。細かい栄養法より、普通に食べることが大切です。
下記の記事では“幸せホルモン”セロトニンを増やす食べ物を紹介しています。しっかり食べて副腎を回復させるだけでなく、幸せホルモンも分泌させましょう!

⑩ 休息・何もしない時間を意識的に確保する
常に刺激を受け続ける生活は、副腎に「働き続けろ」という命令を出し続けているのと同じです。
意識的に「何もしない時間」を作ることは、HPA軸の過活動を鎮め、回復の余白を与えます。
何もしない時間のポイント
- 予定をあえて入れない時間を作る
- ただ座る・ぼーっとする時間を許す
何もしていない自分」を責めないでください。回復のための大切な時間です。
忙しい人でも続けやすい|YouTube動画「休憩中のストレッチ」
副腎の負担を和らげるためには、「ずっと頑張り続ける体」から、「回復できる体」へ切り替える時間をつくることが大切です。
私のYouTubeチャンネルでは、そんな方のために、仕事の合間や自宅で短時間でできる「休憩中のストレッチ」 を紹介しています。
まとめ|副腎疲労は心と身体の休息から
副腎疲労は病気ではありません。
しかし、慢性的ストレスにより回復できなくなった状態は、多くの人が経験します。
大切なのは、何かを「足す」ことではなく、副腎を酷使している習慣を減らすことです。今日できそうなことを、1つだけ選んでみてください。
参考文献
- McEwen, B. S. Stress, adaptation, and disease.
- Tsigos, C., et al. Stress and the HPA axis.
- Thayer, J. F., & Lane, R. D. Neurovisceral integration model.
- Creswell, J. D. Mindfulness interventions.


コメント