【この記事でわかること】
- 科学的に効果が認められている「肝臓を守る10の方法」
- 運動・呼吸・姿勢・温熱など、生活にすぐ取り入れられる習慣
- 飲酒の機会が多い人でも続けやすい“肝臓ケアのコツ”
お酒を飲む機会が多い方は、知らないうちに肝臓へ負担をかけています。
肝臓は“沈黙の臓器”と言われ、疲れていても自覚症状がほとんどありません。
だからこそ、日々の小さな習慣で負担を減らすことがとても大切です。
この記事では、健康運動指導士の視点から科学的に効果が認められている「手軽な肝機能ケア10選」をわかりやすく紹介します。
運動が苦手でも、忙しくても大丈夫。まずは一つだけ、できることから始めてみてください。
肝臓を守る|科学的に効果がある“手軽な肝機能ケア10選

食後10分の軽いウォーキング
食後は血糖値が大きく上がり、肝臓は余った糖を脂肪に変える作業を行います。
ここで軽く歩くと、脚の大きな筋肉が糖を使うため、肝臓に回る糖が減り、脂肪の蓄積が抑えられます。
研究では「食後10分の歩行が脂肪肝・γ-GTP改善に有効」と報告されています。
食後ウォーキングのポイント
- 食後10〜15分以内に歩き始める
- 5〜10分でOK
- 速度は“会話できるペース”でよい
飲み会後の帰宅ルートを「1駅だけ歩く」「家の周りを1周」などにすると、継続しやすいです。
深呼吸・腹式呼吸
横隔膜は肝臓のすぐ下にあるため、深い呼吸で動くと肝臓に“上下の揺れ”が伝わり、血流が促進されると考えられています。
また、副交感神経が優位になることでアルコール代謝がスムーズになり、肝臓の負担が軽減します。
腹式呼吸のやり方

- 背筋を軽く伸ばして座る
- 鼻から4秒かけてお腹をふくらませながら吸う
- 口から6〜8秒かけてゆっくり吐く
- 5〜10回繰り返す(1分程度)
吐く時間を長めにすると副交感神経がよく働き、肝臓の回復が促進されます。
横隔膜ストレッチ
横隔膜が硬いと内臓の動きが制限され、肝臓も周囲の血流が滞りやすくなります。
横隔膜ストレッチは、肝臓上部の圧迫をやわらげ、肝臓を含む腹腔内臓器の循環改善につながります。
横隔膜ストレッチのやり方

- 椅子に座り、前かがみになる
- みぞおち〜肋骨下に両手の指を差し込む
- 息を吐きながら、軽く上方向に押し上げる
- 10〜15秒保持 × 3回
強く押しすぎる必要はありません。「痛気持ちいい」くらいの圧で十分です。
軽いジャンプ・かかと上げ下ろし
短時間でも脚の筋肉が急激に活動すると、筋肉の糖利用が増えて、肝臓に回る糖が減り、肝臓の負担が軽くなります。
かかと上げ下ろしは、
- 下半身の大きな筋ポンプが働く
- 糖の取り込みが増える(GLUT4の働き)
- 血流が改善し、内臓の循環も上がる
といった肝臓を助ける効果が得られます。
軽いジャンプ

その場で軽く10〜20回跳ぶ(バネを使うように)。
ジャンプは筋力向上や骨密度の向上に効果的。下記の記事ではジャンプトレーニングの方法とバリエーションを紹介しています!

かかと上げ下ろし(カーフレイズ)

- 壁やイスに軽く手を添えて立つ
- つま先に体重を乗せるように、かかとをゆっくり持ち上げる
- 一番高い位置で1秒キープ
- ゆっくり下ろす
- 15〜20回 × 1〜2セット
速く上下すると効果が落ちるので“ゆっくり”が鉄則。膝を軽く曲げて行うとヒラメ筋(深層の筋肉)に効き、静脈還流がさらにUP。
胸椎(背中)をほぐす
肝臓へつながる神経は胸椎付近を通ります。背中が固まると呼吸も浅くなり、肝臓の血流を間接的に低下させる要因になります。
胸椎をほぐすと姿勢が整い、呼吸が深くなり、結果として肝臓の働きやすい環境が整います。
キャット&カウ

- 四つ這いになり、手は肩の下、膝は腰の下に置く。
- 息を吐きながら背中を丸める。 おへそを見るように頭を下げ、肩甲骨を左右に開く。
- 息を吸いながら背中を反らせる。 胸を前に向け、肩甲骨を背骨へ寄せる。
- この動きを ゆっくり8〜10回 繰り返す。
背中の動きに合わせて「肋骨が前後に動く感覚」を意識すると胸椎がよくほぐれる。
呼吸と動きをセットにすることで、横隔膜の動きも改善→肝臓周囲の血流UP。
戦士のポーズⅣ

- 両足を大きく開く。前脚は正面、後ろ脚はやや外側に向ける。
- 前膝を曲げ、膝はつま先と同じ方向へ向ける。
- 後ろ手(後脚側の手)を太ももに軽く添える(または腰のまわす)
- 前腕を大きく頭上へ伸ばし、体側を気持ちよく伸ばす
- 写真の通り、胸をひらき、視線は斜め上へ。
- ゆっくり呼吸しながら20〜30秒キープ
- 反対側も同様に行う。
胸を正面よりやや上に向けると、胸椎の伸展(胸をひらく動き)が深まり、呼吸が一気に入りやすくなる。
背中が丸い人・猫背の人・デスクワークが多い人に効果抜群。
肩・胸のストレッチ
胸郭が固いと横隔膜の動きが妨げられ、肝臓周囲の血流が悪くなります。
肩回しや胸開きで胸郭を柔らかくすると、呼吸が深まり、肝臓の血流も自然と改善します。
肩回し

- 両手の指先を肩にのせる。
- 肘で 大きな円を描く ように前から後ろへ回す。
- 10回まわしたら、反対方向(後ろ→前)にも10回まわす。
- 肩ではなく 肩甲骨がしっかり動く ように意識する。
動きを大きくすると、胸郭が広がり深呼吸がしやすくなる。上半身が前に倒れないように背すじをスッと伸ばしたまま行う。
胸のストレッチ

- 壁の横に立ち、片手を壁につく(手の高さは肩と同じか少し下)。
- ひじを軽く伸ばし、手のひら全体で壁を押さえる。
- ゆっくり体を前方へ回旋させ、 胸の前が伸びる位置を探す。
- 呼吸を止めずに20〜30秒キープ。
- 反対側も同様に行う。
肩がすくむと伸びにくいので、肩を下げて胸だけを開く意識で。視線を正面または少し遠くへ向けると胸椎が伸びやすい。
胸が開くと横隔膜の上下動もスムーズに → 肝臓まわりの血流改善 に効果的。
タンパク質をしっかり摂る
肝臓の細胞はタンパク質を材料に修復されます。
不足すると修復が遅れ、肝臓の疲れが蓄積しやすくなるため、飲酒が習慣のある人は特に重要です。
タンパク質摂取のポイント
- 卵、豆腐、納豆、鶏肉、魚を1品追加
- 飲む前に「タンパク質+少量の油」を入れるとアルコール吸収がゆっくりに
“タンパク質 → 野菜 → 炭水化物”の順に食べると血糖値の上昇が緩やかになり、肝臓の負担が減ります。
プロテインを飲んでいる方必見!下記の記事は「プロテインは腎臓に悪いのか」を科学的根拠の基づいて紹介しています。

水をこまめに飲む
アルコール分解には大量の水が必要。
脱水状態だと解毒が追いつかず、肝臓の負担が2〜3倍になると言われています。水を飲むことで血液がサラサラになり、肝臓の循環も改善。
水分補給のポイント
- 飲酒前にコップ1杯
- 飲んでいる間に1杯
- 帰宅後に1杯
- 合計3杯を目安に。
冷たい水は胃腸に負担がかかるため、常温か白湯がベスト。
右わき腹を温める
肝臓は右の肋骨下にあるため、そこを温めると肝臓そのものの血流が直接改善します(温熱療法)。
血流が増えると解毒スピードも上がり、疲労物質がたまりにくくなります。
右わき腹を温める際のポイント
- カイロ、湯たんぽを右脇腹(肋骨の下)に当てる
- 10〜15分温める
入浴後に温めるとさらに効果的。カイロは直接肌に貼らないよう注意。
下記の記事では科学的に認められている体温を上げる方法を紹介しています。体温を上げて肝臓はもちろん、全身を温めましょう!

最初の1杯だけゆっくり飲む
1杯目のスピードが、その後の飲酒量を左右することが研究でわかっています。
ゆっくり飲むと血中アルコール濃度が急上昇せず、肝臓の処理能力の範囲で代謝しやすくなるため負担が軽減。
ゆっくり飲む際のポイント
- 最初の1杯を10分以上かけて飲む
- 度数の低いものを最初に選ぶ(ビール・ハイボール薄めなど)
「最初は氷多めの飲み物」にすると自然にゆっくり飲めます。
YouTubeで「脂肪肝対策トレーニング」も紹介しています
肝臓の負担を減らすには、軽い運動がとても効果的です。
私のYouTubeでは、自宅でできる 脂肪肝対策トレーニング をわかりやすく解説しています。短時間でできて、運動が苦手な方でも続けやすい内容です。気になる方はぜひ動画もチェックしてみてください!
まとめ|今日から始められる小さな肝臓ケア
肝臓は自覚症状が出にくい臓器ですが、今回紹介した10の方法はどれも 今すぐ・簡単に・負担なく続けられるケア です。
食後のウォーキングや深呼吸など、あなたが「これならできそう」と思えるものを、まず一つだけ取り入れてみてください。
小さな習慣でも、続けることで肝臓はしっかり応えてくれます。
参考文献
- American Diabetes Association. Post-meal light activity and glucose control.
- European Association for the Study of the Liver. Guidelines for NAFLD management.
- Harvard Health Publishing. Breathing techniques and autonomic regulation.
- Journal of Hepatology. Effects of moderate exercise on hepatic fat.
- Mayo Clinic Proceedings. Hydration and alcohol metabolism.
- 日本肝臓学会『肝疾患診療ガイドライン』
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝と生活習慣」


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