【この記事でわかること】
- 仕事や学校で失敗したあと、気持ちが切り替えられない理由とその対処法
- 精神論ではなく、科学的に認められている「気持ちを切り替える方法」
- 落ち込んでいるときでも無理なく実践できる具体的な行動のヒント
仕事や学校で失敗したあと、「早く切り替えなきゃ」と思うほど、気持ちが重くなることはありませんか。
それは、あなたの意志が弱いからではありません。失敗したときに気持ちが切り替えられないのは、脳と心の仕組みとして自然な反応です。
大切なのは、無理に前向きになることではなく、科学的に正しい方法で心と身体を整えること。
この記事では、仕事や学校で失敗して落ち込んでいる人に向けて、科学的に認められている「気持ちを切り替える方法」を10個紹介します。
科学的に認められている気持ちを切り替える方法【10選】
① 気持ちを言葉にする(感情ラベリング)
感情を言葉にすることで、脳の扁桃体(不安や恐怖を強く反応させる部位)の過活動が抑えられ、前頭前野(状況を整理し、冷静に判断する部位)が働きやすくなることが示されています。
これにより、感情に巻き込まれた状態から一歩引いた視点を持てるようになります。
「何が起きているかわからない不安」が減ることも、切り替えを助ける重要な要因です。
環境ラベリングのポイント
- 「今、落ち込んでいる」
- 「悔しさと不安が混ざっている」
など、短い言葉で今の感情を表す。
感情は無理にポジティブに言い換えなくて構いません。「言語化する行為」そのものが大切です。
② 自分を責める言葉をやめる(セルフ・コンパッション)
自己批判はストレスホルモンを増やし、感情の回復を遅らせます。
一方、セルフ・コンパッション(自分への思いやり)は、ストレス反応を和らげ、レジリエンス(立ち直る力)を高めることが研究で示されています。
「責めない=怠ける」ではなく、回復を早める合理的な方法です。
セルフ・コンパッションのポイント
- 「誰にでも失敗はある」
- 「今はつらいけど、それでいい」
と、友人にかけるような言葉を自分に向ける。
セルフ・コンパッションは甘やかしではありません。
自分に厳しい人ほど効果が出やす傾向があります。
③ 失敗を「事実」と「解釈」に分ける
私たちの感情は、出来事そのものではなく、それに対する「意味づけ(解釈)」によって大きく左右されます。
認知行動療法では、事実と解釈を切り分けることで、感情の強度や持続時間が短くなることが示されています。
事実と解釈に分けるポイント
- 事実:〇〇を間違えた
- 解釈:自分は無能だ
と分けて書き出す、または頭の中で整理する。
解釈は事実ではありません。解釈を疑うだけで、気持ちは軽くなります。
④ 睡眠を優先する
睡眠不足は、ネガティブな感情反応を強め、感情を抑制する前頭前野の働きを低下させます。
その結果、同じ失敗でも必要以上に引きずりやすくなります。「切り替えられない」のは、努力不足ではなく脳疲労の可能性があります。
睡眠のポイント
- その日は早めに寝る
- 寝る前はスマホや強い光を避ける
気持ちが沈む日は「休む判断」が正解。睡眠は最優先の回復手段。
下記の記事では、科学的に認められている睡眠の質を高める方法を10コ紹介しています。睡眠の質を高め、気持ちを切り替えましょう!

⑤ 体を温める(入浴・温かい飲み物)
体を温めると副交感神経が優位になり、安心感やリラックス反応が高まります。
身体的な温かさは、心理的な安心感とも結びつくことが知られています。
体を温める際のポイント
- 湯船に10〜15分つかる
- 白湯や温かい飲み物をゆっくり飲む
心と身体は繋がっているため、心を切り替えるには身体から整えるのが近道となります。
下記の記事では、科学的に認められている「末端冷え性」を改善する方法を10個紹介しています。身体を温めて、気持ちもリフレッシュさせましょう!

⑥ 軽い有酸素運動(ウォーキングなど)
有酸素運動は、セロトニンやドーパミンの分泌を促し、気分の安定やストレス低下に直接的な効果があります。
また、思考の反芻(同じ考えを繰り返す状態)を中断しやすくなります。
気持ちを切り替える有酸素運動のポイント
- できれば屋外に出て、歩きやすい場所を選ぶ
- 背すじを軽く伸ばし、腕を自然に振る
- 会話ができる程度のペースで歩く
- 5〜10分を目安に行う(長く歩く必要はない)
気持ちが落ち込んでいるときほど、考え続けるより体を動かした方が、脳は早く切り替わります。ウォーキングは、そのための最も手軽な方法です。
⑦ストレッチで身体の緊張をゆるめる
身体の緊張は、脳に「危険」「不安」の信号を送り続けます。
ストレッチで筋緊張がゆるむと、その信号が弱まり、感情の落ち着きにつながります。
首ストレッチ

- 椅子または立った姿勢で、背すじを軽く伸ばす
- 息を吐きながら、ゆっくり頭を前に倒す
- 首の後ろが心地よく伸びたところで 10〜15秒キープ
首の後ろがゆるむと、考えすぎによる緊張が和らぎやすくなります。
肩ストレッチ

- 片腕を胸の前に伸ばす
- 反対の手で、伸ばした腕を体に引き寄せる
- 肩の外側が伸びる位置で 10〜15秒キープ
- 左右交互に行う
肩まわりがゆるむと、無意識の緊張やイライラが抜けやすくなります。
背中・体側ストレッチ

- 椅子または床に座り、背すじを伸ばす
- 両手を頭の上で組む
- 息を吐きながら、上体をゆっくり横に倒す
- 体側から背中にかけて伸びを感じながら 10〜15秒キープ
- 反対側も同様に行う
背骨まわりを動かすことで、気持ちの切り替えが起こりやすくなります。
⑧短時間の筋トレ(低負荷)
筋トレは、行動による達成感を生み、自己効力感(自分は行動できるという感覚)を回復させます。
これは無力感から抜け出すうえで重要な要素です。
下記の記事では「自宅でできる筋トレ」を紹介しています!

スクワット

- 足を肩幅程度に開いて立つ
- つま先とひざの向きを軽く外側にそろえる
- 背すじを伸ばしたまま、椅子に座るようにお尻を後ろへ引く
- 太ももが少し疲れるところまで下げたら、ゆっくり立ち上がる
- 5〜10回を目安に行う
大きな筋肉を使うことで、「動けた」「できた」という感覚が得られやすくなります。
回数よりも「やった」という事実が、気持ちの切り替えにつながります。
カーフレイズ

- 足を腰幅に開いて立つ
- 壁や椅子に手を添え、バランスをとる
- 息を吐きながら、かかとをゆっくり持ち上げる
- つま先立ちになったら一瞬止め、ゆっくりかかとを下ろす
- 10〜15回を目安に行う
反動を使わず、ゆっくり動かすのがポイント。
立ったまま短時間でできるため、落ち込んだ直後でも取り組みやすい筋トレです。
⑨紙に書き出す(ジャーナリング)
落ち込んでいるとき、頭の中では同じ考えや感情が何度も繰り返されます。この「反芻思考」は、気持ちを切り替えにくくする大きな要因です。
紙に書き出すことで、頭の中にあった感情や考えが外に出され、客観的に眺められる状態になります。
研究では、書く行為そのものが感情処理を促し、ストレスや気分の落ち込みを軽減することが示されています。
ジャーナリングのポイント
- 今思っていることを、そのまま紙に書く
- 文の形になっていなくてもOK
- 「つらい」「悔しい」「納得いかない」など単語だけでも十分
ポジティブな言葉を無理に使わなくてOK。いまの感情をそのままに書き出しましょう。
⑩ 信頼できる人と話す
人に話すことは、単なる気分転換ではありません。社会的サポートは、ストレスを和らげる最も強力な回復因子の一つとされています。
気持ちを言葉にして誰かに伝えることで、感情が整理され、脳は「一人で抱えなくていい」と認識します。
この安心感が、ストレス反応を下げ、気持ちの回復を早める方向に働きます。
信頼できる人と話す際のポイント
- 家族・友人・同僚など、安心して話せる相手を選ぶ
- 起きた出来事よりも「どう感じたか」を伝える
- 解決策を求めなくてもOK
話せる相手がいること自体が、回復力になります。
下記の記事では科学的に認められている疲れた心を癒す方法を10コ紹介しています。疲れた心を癒して、気持ちを切り替えましょう!

【YouTube】忙しい人向け|気持ちを切り替えるリフレッシュエクササイズ
仕事や学校で失敗して落ち込んだとき、「前向きになろう」と考えるより、体を動かしてから気持ちを整えるほうが、切り替えはスムーズです。
私のYouTubeチャンネル 覆面インストラクター では、忙しい人でも短時間でできる「リフレッシュエクササイズ」を配信しています。
「今すぐ気持ちを切り替えたい」、「考え続けるのを一度止めたい」。そんなときに、ぜひ活用してみてください。
まとめ|気持ちを切り替える術を実践しよう
失敗したあと、気持ちが切り替えられないのは、あなたが弱いからではありません。
脳と心が、自然に反応しているだけです。
大切なのは、無理に前向きになることではなく、正しい方法で心と身体を整えること。
今日できることを1つ選ぶだけでも、気持ちは少しずつ動き始めます。
参考文献
- Gross, J. J. (2015). Emotion regulation: Current status and future prospects. Psychological Inquiry.
- Lieberman, M. D., et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity. Psychological Science.
- Neff, K. D. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity.
- Beck, J. S. (2011). Cognitive Behavior Therapy: Basics and Beyond. Guilford Press.
- Craft, L. L., & Perna, F. M. (2004). The benefits of exercise for the clinically depressed. Primary Care Companion to the Journal of Clinical Psychiatry.
- Pennebaker, J. W., & Chung, C. K. (2011). Expressive writing: Connections to physical and mental health. Oxford Handbook of Health Psychology.


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