【この記事でわかること】
- 呼吸筋が硬くなると疲労回復できない理由
- 今すぐできる呼吸筋ストレッチの具体的な方法
- 呼吸筋ストレッチによる効果(自律神経・血流・睡眠)
- 続けやすいタイミングと習慣化のコツ
- 呼吸筋ストレッチを実践できる動画の紹介
「なかなか疲れが取れない」「いつも息苦しい気がする」——そんな悩みを抱えていませんか?
実はその原因、呼吸を助ける筋肉=呼吸筋のこりかもしれません。呼吸筋が硬くなると呼吸が浅くなり、酸素の取り込みが不足して疲労感が抜けにくくなると考えられています。
この記事では、疲労回復に役立つ呼吸筋ストレッチを医療現場の知見をもとに紹介します。
1つ30秒でできる簡単な方法ばかりなので、今日からすぐに取り入れられます。深い呼吸を取り戻し、心も体もスッキリさせましょう。


今すぐできる!呼吸筋ストレッチ5選【疲労回復にも効果的】
疲労感や息苦しさの原因のひとつに「呼吸筋のこり」があります。
呼吸筋をほぐすことで呼吸が深まり、自律神経が整い、疲労回復につながることが報告されています(Hamasaki, 2023)。
ここでは自宅で簡単にできる呼吸筋ストレッチを紹介します。
背筋・体側 ストレッチ

- 両手を組んで、真上に腕を伸ばす。
- 背筋を伸ばして、背中のストレッチを行う。
- 次に両手を組んだまま、横に倒して脇腹のあたりをストレッチする。
- 左右それぞれ30秒行う。
体の側面や背中には、肋骨の間にある「肋間筋」や、呼吸の主役である「横隔膜」と連動する筋肉が集中しています。ここを伸ばすことで、肋骨の動きが柔らかくなり、肺がしっかりと膨らみやすくなります。
胸 ストレッチ

- 壁の近くで立位で行う。
- 壁に対して横向きとなり、壁側の手を斜め後ろに伸ばして壁に手をつく。壁側の足を一歩後ろに引く。
- おへそを前に向け、壁と反対側の肩を後ろに引く。
- 左右反対それぞれ30秒行う。
大胸筋が硬くなると、肩が内側に入り、胸が閉じてしまいます。胸が縮こまると肺を圧迫し、深い呼吸がしづらくなるため、胸を開いて大胸筋をほぐすことで空気が入りやすくなります。
首の後ろ ストレッチ

- 椅子、または床に座って行う。
- 背筋を伸ばし、頭を前に傾ける。
- 両手を組んで後頭部に乗せる。
- 首の後ろ側がストレッチされていることを意識する。
- 30秒行う。
首の後ろが緊張すると、呼吸の補助に使われる筋肉(僧帽筋など)が過剰に働きやすくなり、呼吸が「がんばっている」状態になります。ここをゆるめると、過剰な力みが取れて自然な呼吸に戻ります。
首の横 ストレッチ

- 床、または椅子に座った状態で行う。
- 頭を横に倒し、耳を肩に近づける。
- 首の側面の伸びを感じ、左右それぞれ30秒ずつ行う。
首の側面の筋肉が緊張すると、呼吸が浅く速くなりやすいのです。ストレッチでほぐすことで、落ち着いた深い呼吸がしやすくなります。
首の前 ストレッチ

- 背筋を伸ばして座る。
- 両手を胸の骨にあてる。
- 口を閉じたまま、上を向く。
- 喉のあたりがストレッチされているのを感じる。
- 30秒行う。
首の前の筋肉は、無意識の緊張やストレスによって硬くなりやすく、気道の周りを締めつけているような感覚を生むことも。やさしくストレッチすることで喉まわりがゆるみ、「吸いやすさ」が戻ります。
背中 ストレッチ

- 両手を体の前で組む。
- 両手を出来るだけ前に伸ばし、背中をまるめる。
- 肩甲骨のあたりが伸びているのを感じる。
- 30秒行う。
肩甲骨の間にある菱形筋は、猫背や巻き肩で硬くなりやすい部位。ここをほぐすと肩甲骨が開きやすくなり、胸が開いて呼吸がしやすくなります。姿勢改善にも効果的です。
疲れが取れない原因は「呼吸筋のこり」にあった
呼吸筋が硬くなると疲労回復できない理由
呼吸筋が硬直すると肺が十分に広がらず、浅い呼吸になります。結果として血中酸素量が下がり、疲労物質(乳酸や活性酸素)の代謝が遅れ、疲れが残りやすくなります。
リハビリの現場でも「呼吸筋トレーニング」が用いられており、運動耐容能(体力)の改善が報告されています。
浅い呼吸が続くと集中力・睡眠にも悪影響
浅い呼吸は交感神経を優位にし、体が常に緊張モードに。これが続くと睡眠の質が低下し、疲労感が翌日に持ち越されます。
呼吸筋をストレッチしてから寝ると、入眠がスムーズになりやすいです。
呼吸筋をストレッチすると呼吸が楽になることは科学的にも認められています。下記の記事では呼吸筋ストレッチの効果を示した論文(翻訳・要約)を紹介しています。

呼吸筋ストレッチで得られる3つの効果
深い呼吸で自律神経を整える
呼吸筋が柔らかくなると胸郭が大きく広がり、自然と深い呼吸ができるようになります。
深い呼吸は自律神経のバランスを整え、交感神経の過緊張を和らげ、副交感神経を優位にします。結果として心拍数や血圧の安定、ストレス緩和に役立ちます。
深呼吸や腹式呼吸には副交感神経を刺激し、心拍変動(HRV)を改善する効果があると報告されています)。
1分間に6回程度のゆっくりした呼吸(約10秒で1呼吸)が、最も自律神経を整えやすい「共鳴呼吸」と呼ばれています。
自律神経をもっと整えたい!という方向けに、下記の記事では自律神経を整える方法を5つ紹介しています。

血流改善で疲労物質を流す
呼吸筋が硬いと、胸郭の動きが小さくなり、横隔膜のポンプ作用も弱まります。
呼吸筋ストレッチで胸郭が動きやすくなると、横隔膜の上下運動がスムーズになり、血流やリンパの循環が改善。乳酸や二酸化炭素などの疲労物質が効率よく排出されます。
運動後の呼吸筋ストレッチや呼吸筋トレーニングは、血流改善や運動耐容能の向上に寄与するという報告があります。
肩や首の凝りが強い人は「呼吸が浅い」ことが多いです。血流改善を狙って呼吸筋を緩めることは、肩こりの緩和にもつながります。
パソコンやスマホをよく使い、肩こりに悩んでいる人は「腕ストレッチ」を行いましょう。腕と肩は繋がっているため、腕をほぐせば肩こりが楽になります。

睡眠の質を上げて疲労回復をサポート
寝る前に呼吸筋をストレッチすると、副交感神経が優位になり、入眠がスムーズになります。胸や首の筋肉がほぐれて深い呼吸ができると、睡眠中も酸素を効率よく取り込めるため、疲労回復効果が高まります。
呼吸トレーニングを取り入れた研究では、睡眠の質の改善や日中の疲労感軽減が報告されています。
スマホやPCを長時間見た後は交感神経が優位になりがち。寝る前に1〜2分だけ呼吸筋ストレッチを行うことで、睡眠モードへの切り替えがスムーズになります。
呼吸筋ストレッチのおすすめタイミング
朝の呼吸筋ストレッチでスッキリ目覚め
寝ている間に硬くなった体をほぐし、横隔膜を伸ばすと、一気に酸素が体内に取り込まれやすくなります。結果として脳の覚醒が早まり、1日のスタートが快適になります。
起き上がる前にベッドの上で「深呼吸ストレッチ」をするのも効果的です。
昼の合間に呼吸筋を伸ばして疲労回復
デスクワークや家事で長時間同じ姿勢を取ると、呼吸筋はすぐにこわばります。昼にストレッチを挟むことで血流が改善し、午後の疲労感を軽減できます。
特に「体側伸ばし」は座ったままでもできるため、オフィスや休憩時間におすすめです。
夜の呼吸筋ストレッチでリラックス&快眠
副交感神経が優位になる夜は、呼吸筋ストレッチでリラックスするチャンス。
心拍数が下がり、入眠しやすくなります。睡眠の質が上がることで翌朝の疲労回復もスムーズになります。
照明を暗めにして、深い呼吸を意識しながらストレッチすると効果倍増です。
呼吸筋ストレッチを続けるコツと注意点
習慣化のコツ
- 1日30秒から:最初から長時間やろうとせず、短時間で習慣にする
- トリガーを決める:「歯を磨いたら」「寝る前に布団に入ったら」といった習慣に組み込むと継続しやすい
- 視覚化:カレンダーにシールを貼るなど、達成感を見える化するとモチベーションが続きます
安全に行うための注意点
- 無理に伸ばさない:「痛い」ではなく「気持ちいい」と感じる範囲で行う
- 呼吸を止めない:ストレッチ中は自然な呼吸を続ける
- 体調不良時は中止:息苦しさや胸痛があるときは無理せず休み、必要に応じて医療機関を受診する
下記の記事は「ストレッチの強さはどのくらいが一番効果的なのか」まとめた論文を翻訳・要約し、紹介しています。

呼吸筋ストレッチ(動画)で疲労回復
文字だけではイメージしづらい方のために、私のYouTubeチャンネル「覆面インストラクター」では呼吸筋ストレッチを動画で紹介しています。記事で学んだことを、ぜひ動画で一緒に実践してみてください。
まとめ|呼吸筋を伸ばして疲労回復&深呼吸を取り戻そう
呼吸筋のストレッチは「深い呼吸」「血流改善」「自律神経の安定」に直結し、疲労回復の大きな助けになります。
今日から一つでいいので試してみて、深い呼吸と元気を取り戻しましょう!


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