【この記事でわかること】
- 股関節が“つまる”主な原因と改善の基本
- 自宅&器具なしで実践できる科学的メソッド10選
- やってはいけないNG対策
- 股関節がつまる
- 股関節を曲げると前側が痛い
- 股関節の違和感が続く
このような感覚、多くの場合“股関節が悪い”わけではありません。
実は股関節のつまりは、周囲の筋肉や関節包が硬くなったり、体幹の安定が低下していることで起きるケースがほとんどです。
この記事では、理学療法や運動学の研究をもとに、自宅でできる改善メソッドを10個紹介します。
難しいことはしません。器具も不要です。今日から5分だけ、少しずつ続けてみてください。
“股関節のつまり”改善の基本
股関節の“つまり”は、関節そのものが悪いというより、周囲の筋肉や関節包(関節を包む袋状の膜)の硬さ、そして体幹が安定していないことによって起こりやすくなります。
改善のポイントはとてもシンプルで、
①伸ばす(柔軟)
②使う(筋活性)
③安定させる(体幹)
この3つをセットで行うことです。
ストレッチだけ、筋トレだけ…という片方だけのアプローチでは改善しにくく、「伸ばす→使う→安定」の流れが整ったときに“スッ”と動きが軽くなる実感が得られます。
自宅・器具なしでできる股関節のつまり改善法10選
① 腸腰筋ストレッチ

- 片膝を床につき、もう片方は膝立ちにする
- 上体をゆっくり前に移動させる
- 後ろ脚の付け根の伸びを感じた位置で10〜20秒キープ
- 反対も同じように行う
腸腰筋が硬くなると、大腿骨が前方向に押し出されるような動きになり、”前側のつまり”を感じやすくなります。
腸腰筋を緩めると、股関節の動きが後ろ方向に戻り、つまり感が軽くなっていきます。
腰を反りすぎると股関節に負担がかかるため、お腹を軽く引き上げる意識で行いましょう。
- 反り腰
- 骨盤の前傾が強い人
にも効果的です。
② バタフライ

- 座って足裏を合わせる
- 背すじを伸ばしたまま、両膝を床方向へ軽く下げる
- 呼吸を止めず20〜30秒キープ
足を開いて内ももの筋肉や関節包まわりをゆっくり伸ばすことで、股関節の内側の滑りがよくなります。
内もも(内転筋)や股関節包をゆるめる基本的なモビリティです。このモビリティ(動きの余裕)が少ないと、前側につまり感が出やすくなります。
膝を手で無理に押さないのがポイントです。軽く上下に揺らすとよりゆるみやすくなります。
③ ハムストリングス柔軟性改善

- 片膝を床に付き、反対側の脚を前に伸ばします
- つま先は上に向け、かかとを前に押し出すようにします
- 背すじをできるだけ伸ばしたまま、ゆっくり体を前に倒していきます
- 太ももの裏に軽く伸びを感じたところで20〜30秒キープ
ハムストリングスが硬いと、骨盤が後傾しやすくなり、股関節が本来の動かし方をしにくくなります。
太ももの裏が柔らかくなると、骨盤と股関節がスムーズに連動し、結果的に股関節の動きが滑りやすくなります。
背中を丸めて“無理に前に倒す”必要はありません。痛みではなく“じわ〜っと伸びる”感覚で止めましょう
④ 中殿筋アクティベーション

- 横向きに寝る
- 上側の脚をゆっくり天井方向へ上げる
- 15回繰り返す
- 左右反対も行う
中殿筋は股関節を横から支える筋肉です。この筋肉が働かないと、前側に負担が集中して“前側がつまる”原因になります。
中殿筋が使えるようになると、大腿骨が正しい位置で動きやすくなり、つまり感が軽くなります。
脚を後ろに引きすぎないこと。腰を反らないように注意。
⑤ 大殿筋の強化(スクワット)

- 足は肩幅
- お尻を後ろに引きながらしゃがむ
- しゃがみすぎず、腰が丸くならない範囲でOK
- 10〜15回
お尻の筋肉(大殿筋)が弱いと、股関節が前にずれやすくなり、歩きや立ち上がり動作でつまり感が出やすくなります。
スクワットで大殿筋を使えるようになると、股関節が“後ろから支えられる”ため、前側への負担が減りやすくなります。
「膝を曲げる」ではなく「お尻を後ろに引きながらお尻を下げる」イメージが大事です。
スクワットはダイエットにも効果的!下記の記事ではスクワットで痩せるための実践法(ポイント)を紹介しています。

⑥ 体幹(プランク)

- 肘とつま先で体を支える
- お腹を軽く引き上げる
- 頭〜背中〜お尻が一直線になるようにキープ
- 20〜30秒行う
股関節は“骨盤の上”で動くため、体幹が安定していることはとても大切です。体幹(特に腹横筋)が働くと、骨盤が安定し、股関節がスムーズに回転できるようになります。
つまり、「土台が安定することで、股関節が楽に動ける」ようになります。
体幹が安定すると股関節の動き方が改善しやすくなります。
腰が反りやすいので、おへそを背中方向に軽く引き寄せる意識で。
体幹を鍛えると歌が上手くなります!下記の記事では体幹トレーイングをはじめとした、科学的に認められている歌が上手くなる方法を紹介しています!

⑦ キャット&カウ

- 四つ這いになる
- 息を吐きながら背中を丸める(キャット)
- 息を吸いながら胸を開いて背中を反らせる(カウ)
- ゆっくり10回
腰椎と股関節の動きは連動しています。腰や骨盤まわりが固まっていると、股関節がうまく回らず、前側につまりを感じることがあります。
キャット&カウで腰と骨盤の動きをゆるめると、股関節の滑りが良くなり、つまりが抜けやすくなります。
呼吸と動きを合わせると効果が高まります。
⑧ 腹横筋の呼吸(深い呼吸)

- 鼻から吸ってお腹をふくらませる
- 口からゆっくり吐いてお腹をへこませる
- 5〜10回ゆっくり
腹横筋は、体幹の中でも奥にあるインナーマッスルです。腹横筋が働くと骨盤が安定し、股関節の動きがスムーズになります。
呼吸と合わせて行うことで、全身の緊張が取れやすく、股関節の力みが抜けるため、つまり感が軽くなる人が多いです。
「吐く時間を長めに」がポイントです。
⑨ 入浴(温熱療法)
- 38〜40℃程度の湯船につかる
- 5〜10分温める
- その直後にストレッチを行う
温めることで血流が良くなり、筋肉や関節包が柔らかくなります。
特にお風呂上がりは可動域が高まりやすいため、ストレッチ効果が上がります。
「冷えて硬くなった状態」よりも「温かくて柔らかい状態」のほうが股関節が動きやすくなるため、つまりの改善に役立ちます。
お風呂の直後がいちばん動きやすくなります。
⑩ リズム歩行(カデンス意識)
- 音楽に合わせてリズム良く歩く
- 歩幅は狭くてOK
- テンポは普段より少し速く
股関節は一方向に動くだけでなく、歩行中に“微妙な角度変化”を続けています。
リズム良く歩くとこの“角度変化の滑走”が改善し、つまり感が抜けやすくなります。特に音楽に合わせて歩くことで、神経系のコントロールが整い、股関節の動きもスムーズになります。
「速く歩くこと」よりも「一定のリズム」で歩くことが大切です。
やってはいけない!股関節のつまりNG対策
股関節の“つまり感”は、やり方によって悪化してしまうことがあります。以下のような対処を続けると、かえって前側にストレスがかかるため注意が必要です。
無理な開脚をする
「硬い=開脚で伸ばす」が正解に見えますが、股関節は角度によって前側に負担が集中します。
特に痛みを伴いながらの開脚は、関節包のストレスや炎症につながります。
痛い角度は“今はまだやらない”が正解です
“前”だけを伸ばし続ける
股関節のつまりは前側が原因に感じますが、実際は“お尻や体幹の弱さ”が根本のことが多いです。
前側ストレッチだけを繰り返すと、逆に前に押し出されてつまり感が強くなることがあります。
後ろ(お尻)を鍛えるエクササイズを必ずセットにしましょう。
痛い方向へ繰り返し捻る
痛みやつまりを感じる方向へグリグリ捻ると、関節包に余計な摩擦が起きることがあります。
痛みが出る角度は一旦避け、快適に動ける角度から改善するほうが結果的に早く変わります。
“気持ちよく動ける角度”を探すのが正解です
まとめ|“伸ばす+使う+安定”がカギ
股関節は、ストレッチだけでも筋トレだけでも改善しません。
伸ばす(柔軟)→使う(筋活性)→安定させる(体幹)
この流れが揃ったときに、前側のつまり感がスッと軽くなる人が多いです。毎日全部をがんばる必要はなく、1〜2種目を続けるだけでも変化が出やすくなります。
参考文献
- Zacharias A. et al. Hip pain and movement disorders: physiotherapy perspectives. J Orthop Sports Phys Ther, 2020.
- Grimaldi A, Fearon A. Gluteal Tendinopathy: Integrating Pathomechanics and Clinical Features. J Orthop Sports Phys Ther, 2015.
- Segal NA, Felson DT. Hip morphology and osteoarthritis development: the Framingham study. Arthritis Rheum, 2009.
- Koling C, et al. Hip joint biomechanics and load distribution in rehabilitation. Clin Biomech, 2018.
- Takatori R, et al. Hip joint capsule and anterior impingement. Clin Anat, 2016.


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