サルコペニアとは?原因・症状・予防方法を専門家がわかりやすく解説

【この記事でわかること】

  • サルコペニアとは何か、原因とサインがわかる
  • 自宅で簡単にできる「サルコペニアチェックリスト(SARC-F)」で状態を確認できる
  • 科学的根拠に基づいたサルコペニア予防の方法10個がわかり、今日から実践できる

私は医療系運動指導士として病院やスポーツジムで活動しています。

加齢によって筋肉が減り、動作が重くなる「サルコペニア」。最近では 40〜50代から予防を始めることが大切だと言われています。

しかし、難しいトレーニングや特別な道具は必要ありません。筋力を守るためには、科学的に効果が確認されている“日常の小さな習慣”がとても有効です。

この記事では、サルコペニアとは何かをわかりやすく紹介し、研究で効果が認められている サルコペニア予防の方法10選 を詳しくお伝えします。

今日から始められる方法ばかりなので、ぜひ参考にしてください。

目次

サルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢に伴って 筋肉量・筋力・身体機能が低下してしまう状態 のことです。

特に下肢(太もも・ふくらはぎ)から弱りやすく、

  • 歩く速度が落ちる
  • 立ち上がりが重くなる
  • つまずきやすくなる

といった日常動作に影響が出ます。

近年では 40〜50代からの“サルコペニアの予防”が重要と言われています。

サルコペニアの原因

サルコペニアは、次の原因が複合的に重なって進みます。

  • 加齢による筋合成低下
  • 活動量の減少
  • タンパク質・ビタミンD不足
  • バランス能力・神経筋機能の低下
  • 長時間の座りっぱなし

これらは生活習慣を整えることで予防が可能です。

サルコペニアのサイン

以下に当てはまる場合、筋力の低下が始まっている可能性があります。

  • 歩く速度が遅くなった
  • 階段がつらい
  • 立ち上がり動作が重い
  • 買い物袋が重く感じる
  • つまずきやすくなった

今すぐできるサルコペニア診断チェック

SARC-F チェックリスト(サルコペニア簡易判定)

1. 物を持ち上げる・運ぶのは難しいですか?



2. 部屋の中を歩くのが難しいですか?



3. 椅子から立ち上がるのが難しいですか?



4. 階段を上るのが難しいですか?



5. 過去1年間の転倒回数は?



科学的に認められているサルコペニア予防の方法10選

1. レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)

年齢を重ねると、特に太もも・お尻などの大きな筋肉から弱りやすくなります。

スクワットやカーフレイズ、ヒップリフトのようなシンプルな筋トレは、

  • 歩く
  • 立ち上がる
  • 階段を上る

といった日常生活の動作に使う筋肉をまんべんなく刺激できます。

これらの筋肉を鍛えることで、サルコペニアの“入り口”となる筋力低下を防ぎ、

  • 動作の軽さ
  • 疲れにくさ
  • 転倒予防

に大きく役立ちます。

スクワット

  1. 足は肩幅、つま先は軽く外側
  2. お尻を後ろへ引くようにゆっくりしゃがむ
  3. 太ももと床が平行になる手前で戻る
  4. 10回×1〜2セット

膝が内側に入らないよう注意する。ゆっくり下ろす(膝を曲げる)”が効果大。

カーフレイズ

  1. 壁やイスに手を添えて立つ
  2. かかとをゆっくり持ち上げる
  3. 一番高い位置で1秒キープ
  4. ゆっくり下ろす
  5. 15〜20回×1〜2セット

ふくらはぎは下肢の筋量維持に重要な部位。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、血液の循環にも関わる筋肉。

ヒップリフト

  1. 仰向けで膝を立てる
  2. お尻を持ち上げ、膝〜肩が一直線に
  3. ゆっくり下ろす
  4. 10〜15回×1〜2セット

お尻(大臀筋)は歩行速度と強く関連する筋肉。腰が反らないようお腹を軽く締める。

2. 有酸素運動

有酸素運動は足の筋肉をよく使うため、血流を増やして筋肉の代謝を活発にする効果があります。

特にインターバル速歩は「速く歩く→ゆっくり歩く」を繰り返すため、筋力と持久力の両方を効率よく刺激できます。

無理のない速歩きでも、続けることで筋肉量の減少を食い止め、体力維持や疲れにくい身体づくりに役立ちます。

インターバル速歩のポイント

  • 3分速歩き → 3分ゆっくり歩きを繰り返す
  • 早歩きは大股で
  • 10分〜15分でOK
  • 週3回が理想

速歩きは“いつもより少し息が上がる”程度。インターバル速歩は脂肪燃焼・血流改善効果も高いのが特長。

インターバル速歩のより詳しい方法は下記の記事で紹介しています!ダイエットにもおすすめです!

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3. たんぱく質+ロイシン・HMBを意識した食事

筋肉は「たんぱく質」が材料になっています。

中でもロイシンというアミノ酸は、筋肉をつくるスイッチを入れる働きがあり、HMBは筋肉の分解を抑えてくれます。

つまり、食事でこれらをしっかり摂ることで “筋肉の修復と維持” がスムーズに行われ、サルコペニアの進行をゆっくりにすることができます。

難しいサプリがなくても、日常の食事を少し意識するだけで大きな効果があります。

たんぱく質・アミノ酸摂取のポイント

・食事ごとに10〜20gのたんぱく質
・豆腐、納豆、卵、肉、魚など
・ロイシン豊富な食品:大豆・肉・乳製品

“朝食にタンパク質”を入れるだけで筋合成率が上がることが研究で判明。

下記の記事では「プロテインは腎臓に悪影響を与えるのか?」を科学的根拠に基づいて紹介しています。プロテイン愛好者必見です!

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4. 朝のウォーキング+朝日を浴びる

朝日には、

  • ビタミンDをつくる働き
  • 体内時計を整える働き

があります。

ビタミンDは筋肉の健康維持に欠かせない成分で、不足すると 筋力の低下や転倒リスクの増加 につながります。

朝日を浴びることと軽いウォーキングを組み合わせることで、筋肉への刺激とビタミンDの両方が一度に得られるため、サルコペニア予防にとても効率がいい方法です。

朝ウォーキングのポイント

  • 朝起きてから1〜2時間以内に外へ出る
  • 5〜10分だけ歩く
  • 太陽を直接見ないようにして自然光を浴びる
  • 歩きながら肩・胸を軽く開くイメージで姿勢を整える

朝日を浴びると、夜に眠くなる“メラトニン(睡眠ホルモン)”のリズムが正常化し、睡眠の質向上にも寄与します。

5. バランストレーニング

片足立ちやつぎ足歩行は、足の筋肉だけでなく「身体を支える神経の働き」も鍛えられます。

この神経の働きが衰えると、筋力があっても転倒しやすくなったり、動作がぎこちなくなります。

バランストレーニングを取り入れることで、“筋肉+神経” が連動して働く状態を保てるため、サルコペニアの進行を防ぐ力が高まります。

立木のポーズ

  1. 背筋を伸ばしてまっすぐ立つ
  2. 片足を軽く持ち上げ、立っている足の内側にそえる
    ・足首
    ・ふくらはぎ
    ・膝の少し上(膝には直接当てない)
    など、バランスがとりやすい高さでOK。
  3. 両手を胸の前で合わせる(合掌)
  4. ゆっくり5〜10呼吸キープ
  5. 反対側も同じように行う。

足裏で床を押す感覚を意識すると、体幹が自然と働き姿勢が整う。サルコペニアで弱りやすい中殿筋・内側広筋なども使われやすくなります。壁やテーブルなどを支えに使ってもOK.

6. 足趾(あしゆび)を動かす

足指は、歩くときの“最初と最後に地面に触れる部分”で、実は身体のバランスや歩幅に大きく関係しています。

足指を動かすと、衰えやすい小さな筋肉や神経が目覚め、

  • 歩行速度
  • 歩幅
  • バランス能力

が自然と改善します。

足元が安定すると、転倒予防効果も高まり、サルコペニアのリスクを確実に下げられます。

足指ストレッチ①

  1. 片足を軽く持ち上げ、片手の指を足指の間に一本ずつ差し込む。
  2. すべての指がしっかり足指の間に入ったら、手を軽く握って足指の間を広げるようにする。
  3. その状態で、足首を前後・左右にゆっくり動かす。
  4. 30〜40秒キープして反対側も行う。

足指の間が硬いほど最初は入りにくいですが、徐々に広がってきます。足指が開くと、歩행時の“地面をつかむ力”が戻り、歩きやすさが大きく変わります。

血流改善・むくみ改善にも非常に効果的。

足指ストレッチ②

  1. 足を軽く持ち上げ、手で足指を1本ずつつまむ。
  2. 上下・左右・小さな円を描くようにゆっくり動かす。
  3. 5〜10秒ずつ、全ての足指を丁寧に動かす。
  4. 反対側も同じように行う。

小さな動きでも“神経が目覚める”ように足元がポカポカしてくる。

足指の動きが良くなると、つまずきにくい・歩幅が広がる・バランスが取りやすくなる と良いことがたくさん。

7. ふくらはぎをほぐす

ふくらはぎは“第二の心臓”と呼ばれるほど血流を支える筋肉。ここが硬くなると足全体の動きが悪くなり、歩行スピードも落ちてしまいます。

ほぐして柔らかくすることで血流が改善し、

  • 歩行能力
  • 姿勢
  • 疲れにくさ

が大きく向上します。

筋肉が動きやすくなるので、普段の運動効果もアップします。

ふくらはぎ手根マッサージ

  1. 手のひらの付け根(手根)を使って、ふくらはぎの内側と外側を挟むように支える
  2. 下から上に向かって、ふくらはぎ全体を“圧迫するように”ゆっくりマッサージする。
  3. 内側 → 外側 → 後ろ側と場所を変えてほぐす。
  4. 1〜2分を目安に行い、反対側も同様に。

強く圧迫しすぎない。「気持ちいい」程度の圧で十分下→上(足首→膝方向)に流すと静脈還流が促されて効果的。

ふくらはぎ膝ぐりぐりマッサージ

  1. 仰向けに寝て、片膝を立てる。
  2. もう一方の脚のふくらはぎを、立てた膝の上に乗せる
  3. ふくらはぎの内側・外側・中央を、膝にあてて 左右に軽く動かして“ぐりぐり”ほぐす
  4. 場所を少しずつ変えながら全体をほぐす。
  5. 1〜2分ほど行い、反対側も同様に。

自分の体重を使うため、力を入れなくても深い圧が入る。コリの強い部分に膝が当たると気持ちよくほぐれる。

寝ながらできるので、寝る前の冷え対策にも最適。

8. 大きな声で歌う

歌うときは横隔膜・肋間筋・体幹のインナーマッスルがフル活用されます。

これらは姿勢や歩行の安定にも関わる重要な筋肉です。歌うことで 呼吸が深くなり、姿勢が良くなり、体幹が自然と鍛えられる ので、

運動が苦手な人でも楽しくサルコペニア予防ができます。

大きな声で歌う際のポイント

  1. 姿勢をまっすぐにして立つか座る。
  2. 深呼吸を数回してから、好きな曲を1〜2曲歌う。
  3. お腹から声を出すイメージで、無理のない範囲で発声する。

横隔膜や体幹が自然と働き、姿勢が整いやすくなる。呼吸が深くなり、歩くときの安定感がアップ。

下記の記事では「科学的に認められている歌が上手くなる方法」を10コ紹介しています。どの方法も手軽に行えます!

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9. 咀嚼トレーニング(ガムを噛む)

ガムを噛むと脳の運動に関わる部分が活性化し、脚の反応速度やバランス能力が上がるという研究があります。

「噛む」という小さな動作が、“脳と筋肉をつなげる神経の働き” を強化してくれるため、転倒予防にもとても効果的です。

咀嚼トレーニングのポイント

  1. 無糖ガムを1つ用意する。
  2. 左右の歯でバランスよく1〜2分噛む。
  3. 強く噛む必要はなく、自然な噛み方でOK。

噛む刺激が脳を活性化し、下肢の反応速度・バランスが向上する。歩行の安定にもつながり、転倒予防のプラス効果。

10. 階段の「下り」だけを利用する

階段を下りるとき、太ももの前側の筋肉には“伸ばされながら力を出す”負荷がかかります。

これは筋肉を強くするのに非常に効果的で、普通の筋トレよりも 少ない回数で大きな刺激が入る と言われています。

膝の負担も少なく、安全に筋力アップが目指せるのが特徴です。

階段トレーニングのポイント

  1. 階段の“下り”だけを使う意識を持つ。
  2. 手すりを軽く持ちながら、一段ずつゆっくり下りる。
  3. 1〜2階分だけでも十分効果あり。

太ももの前の筋肉に効率よく負荷が入り、筋力維持に役立つ。息が上がりにくく、運動が苦手な人にも続けやすい。

下りるだけなので短時間で手軽に行えます。

自宅でできる“筋持久力トレーニング(動画)”も活用しよう

サルコペニアを防ぐためには、日々の生活に「続けやすい運動」を取り入れることが大切です。私のYouTubeチャンネルでは、自宅で簡単に行える “筋持久力トレーニング” を配信しています。

動画では、初心者でも取り組みやすい動きを中心に、正しいフォームやポイントをわかりやすく解説しています。
短時間でできるので、ぜひ日常の習慣に取り入れてみてください。

まとめ|今日の“小さな積み重ね”が未来の筋力を守る

サルコペニアは、年齢とともに誰にでも起こり得るものですが、日々の小さな習慣を積み重ねることで十分に予防できます。

今回紹介した10個の方法はどれも、

  • 特別な器具がいらない
  • 今日から始められる
  • 科学的に効果が確かめられている

という“続けやすいもの”ばかりです。

まずは 「できそうなものを1つだけ」。生活にほんの少し取り入れるだけで、未来の筋力が大きく変わります。あなたのペースで無理なく続けてみてください。

参考文献

  • Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis. Age Ageing.
  • Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update.
  • Fielding RA, et al. Sarcopenia: An Undiagnosed Condition in Older Adults. J Am Med Dir Assoc.
  • Clark BC, Manini TM. Functional consequences of sarcopenia and dynapenia in the elderly.
  • Landi F, et al. Physical activity and muscle health in aging.
  • Yoshimura E, et al. Intervention studies for sarcopenia prevention.
  • Bauer J, et al. Evidence-based recommendations for optimal protein intake in older adults.
  • Fujita S, Volpi E. Nutritional strategies to promote muscle mass.
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この記事を書いた人

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スポーツインストラクター|健康運動指導士|心臓リハビリテーション指導士|ヨガインストインストラクター|スポーツジム・病院勤務|読書好き|漫画も好き|名言が好き|運動・健康について情報発信|YouTubeでトレーニング動画配信中

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