【この記事でわかること】
- 科学的根拠に基づいた「歌が上手くなる方法」 を、身体・呼吸・発声の観点から体系的に理解できる
- 誰でも今日から実践できる、効果の高い10のトレーニング(体幹・呼吸・ストレッチ・発声準備)がわかる
- 高音が苦しい、音程が安定しないなどの悩みを改善するための、再現性の高い練習の順番がわかる
「歌が上手くなりたいけど、何を練習すればいいのかわからない…」。そんな悩みは、特別な才能が必要なわけではありません。
実は“歌がうまい人ほど”、呼吸・姿勢・体幹・口や舌の動きなど、身体の使い方を科学的にコントロールしていることがわかっています。
声そのものは「身体がつくる楽器」。だからこそ、身体を正しく整えることで、
- 音程が安定し
- 高音が楽に出て、
- 声量や響きが自然にアップします。
この記事では、最新の音声科学・生理学に基づき、誰でも効果が出やすい“歌が上手くなる方法10選” を、
わかりやすく紹介します。
今日からあなたの歌が変わります。
科学的に認められた歌が上手くなる方法10選

1.体幹トレーニング
歌が安定しない最大の原因のひとつが、体幹の弱さです。
体幹、とくに腹横筋(ふくおうきん)は「息をコントロールする筋肉」の中心であり、発声の土台を支える“内側のコルセット”のような存在です。
腹横筋がうまく働かないと、
- ロングトーンが続かない
- 音程が安定しない
- 高音で喉に力が入りやすい
などの問題が起きやすくなります。
逆に、体幹が安定すると、横隔膜の動きがスムーズになり、少ない力で声が伸びる「発声が楽な状態」 がつくれるようになります。
歌が上手い人ほど、実は「体幹が強い」。これは科学的な声楽研究でも示されているポイントです。
ドローイン

ドローインは、立っても座っても寝てもできる、腹横筋の“基本トレーニング”。呼吸と一緒に行うことで、歌に必要な「腹圧コントロール」が身につきます。
- 仰向けになり、膝を軽く立てる
- 両手を腰の下に差し込む
- 鼻から軽く息を吸う
- 息を吐きながら、おへそを背骨に近づけるイメージでお腹をへこませる(両手の上に軽く圧をかける)
- へこんだまま5〜10秒キープ(呼吸は止めない)
- ゆっくり脱力して戻す。5〜10回繰り返す
腹筋を“固める”のではなく、へこませる意識が重要。できれば毎日1〜2分でOK。継続すると効果が出やすい。
ヒップリフト

ヒップリフトは、腹横筋だけでなく骨盤底筋やお尻の筋肉も働き、「呼吸が安定しやすい体幹」をつくるのに非常に効果的です。
- 仰向けになり、膝を立てる(足は腰幅、手は体の横)
- 息を吐きながらお尻を持ち上げる
- 膝・お腹・胸が一直線になる位置で2〜3秒キープ
- 息を吸いながらゆっくりお尻を下ろす
- 10回×1〜2セット
お腹を“薄くする”意識で腹横筋が働きやすくなる。腰を反らせすぎないように注意する。
2. 姿勢を整える
歌声の安定には、喉よりも先に 「姿勢」 を整えることが重要です。
姿勢が崩れると胸郭(肋骨まわり)が動きにくくなり、横隔膜の動きも制限され、息が浅く、不安定な声になってしまいます。
良い姿勢は「背筋をピンと伸ばす」ことではなく、
- 肋骨が自然に広がる
- お腹と背中が柔らかく働く
- 首・肩に余計な力が入らない
という “呼吸がしやすい姿勢” のことです。
この姿勢をつくるためには、胸郭と背骨(特に胸椎)の動きをよくするエクササイズが効果的です。
キャット&カウで姿勢を整える

キャット&カウは、ヨガでも用いられる 胸郭・背骨の柔軟性アップ に最適なエクササイズです。
背骨が滑らかに動くと、横隔膜の動きがスムーズになり、呼吸が深く → 声が安定し → 高音も楽になる という流れが自然につくられます。
- 四つ這いの姿勢になる(肩の下に手、股関節の下に膝)
- 息を吐きながら背中を丸めて、目線はおへそに向ける
- 息を吸いながら胸を少し開き、背中を反らせて目線は斜め上に向ける
- キャット → カウを ゆっくり5〜10回繰り返す
- 呼吸に合わせて、背骨が波のように動くイメージで行う
腰だけで動かすのではなく、“胸郭全体を動かす”意識を持つ。動きは大きさより なめらかさ を大切にする。
キャット&カウはヨガのポーズの一つで、ヨガはダイエットにも効果的。詳しくは下記の記事で!

3. 首・肩のストレッチ
首・肩まわりが固いと、喉頭(声帯のある部分)が上方向へ引っ張られ、高音が苦しい・声がつまる・喉が締まる…などの問題が起きやすくなります。
歌う前に首・肩まわりをほぐすことで、喉への余計な力を使わず、身体で声を支える準備が整います。
ここでは、歌う前に特に効果の高い3つのストレッチを紹介します。
首の後ろストレッチ

首の後ろにある「後頭下筋群」「僧帽筋上部」は喉の力みに直結しやすい筋肉。
ここがゆるむと、喉の圧迫感が大きく軽減されます。
- 背筋を軽く伸ばして座る or 立つ
- 片手、または両手で頭の後ろを軽く押さえる
- 頭を前にゆっくり倒し、首の後ろを伸ばす
- 20〜30秒キープ
- 呼吸は止めずに、吐くたびに力を抜く
背中を丸めず、軽く伸ばした姿勢で行うと効果UP。
首の横ストレッチ

首の横にある「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」は、喉の位置や声の響きに大きく関わる重要な筋肉です。
この筋肉が固いと、喉が上がりやすく、声が詰まりやすくなります。
- 背筋を軽く伸ばしたまま座る or 立つ
- 右手で左側のこめかみを軽く押さえる
- 頭を右側へゆっくり倒し、左側の首筋を伸ばす
- 20〜30秒キープ
- 反対側も同じように行う
肩が一緒に上がらないよう、肩はリラックスする。痛みが出ない範囲で「気持ちよく伸びる」程度に。
三角筋ストレッチ

三角筋(肩の外側)が固まると肩がすくみ、その影響で喉頭が上がりやすくなり、発声が不安定になります。
肩の緊張を取ることで、喉まわりの余計な力を抜きやすくなります。
- 片腕を胸の高さでまっすぐ横に伸ばす
- 反対の手で、その腕を 下から抱えるように自分の方へ引き寄せる
- 肩の外側〜肩甲骨にかけて伸びを感じる
- 20〜30秒キープ
- 反対の腕も同様に行う
肩が上がらないよう、軽く下へ「ストン」と落とす引き寄せる力は強くない方が、深い部分が伸びやすい。
4. 舌ストレッチ
舌が硬いと声の通り道が狭くなり、“こもった声・苦しい声”になります。
舌が柔らかいほど、
- 声がよく響く
- 声がこもらない
- 喉の圧迫が減る
などのメリットがあります。
効果が証明されている舌ストレッチ

- 軽く口を開け、舌を前にゆっくり出す(10〜15秒キープ)
- 舌の先を上の歯茎につけ、舌を上方向に伸ばす(10〜15秒)
- 舌全体を上下左右にゆっくり動かす(各5秒×数回)
- これを1セットとして、2〜3回行う
顎に力を入れず、舌だけを動かすことが大切。首・肩・喉がリラックスしていると舌が伸びやすい。
5.腹式呼吸トレーニング
歌の安定性を決める一番の鍵は「息が安定しているかどうか」です。その“息の基礎”をつくっているのが 腹式呼吸(横隔膜呼吸) です。
横隔膜がしっかり動くと、
- 息の量が増える
- 息のスピードがコントロールしやすくなる
- 高音が楽に出る
- ロングトーンが伸びる
- 喉に無駄な力が入らなくなる
といったメリットが生まれます。
歌が上手い人ほど、横隔膜の動きが大きく、呼吸が深いことが研究でも分かっています。
腹式呼吸トレーニング

- 仰向けになり、膝を軽く立てる(座ってもOK)
- 片手を胸、もう片方をお腹に置く
- 鼻からゆっくり息を吸い、お腹がふくらむのを感じる
- 口から細く長く息を吐き、お腹がへこむのを感じる
- 吐くときは「フーーー」と優しく細い息にする
- これを 5〜10回 くり返す
吸う量よりも“吐く息を細く長く”がポイント。吐く時間は吸う時間の2倍くらいを目安に。
6.口周りのウォームアップ
歌声がこもる、滑舌が悪い、声が前に飛ばない——。これらの原因の多くは 口まわりの筋肉が固いこと にあります。
特に、
- 口をすぼめる筋肉(口輪筋)
- 噛む筋肉(咬筋)
の緊張は、発声時の声道の形を不安定にし、声が響きにくい・言葉がはっきりしないことにつながります。
歌う前に口周りをウォームアップすると、
- 発音が滑らかになり
- 声が前へ飛びやすくなり
- 喉の力みも軽減し
- 高音が出しやすくなる
という “歌う準備モード” にスムーズに切り替わります。
口周りのウォームアップ方法

- 唇をすぼめてキュッとすぼめる
- 次に、口を縦に大きく開ける
- これを10回くり返す
顎ではなく“唇と口周りの筋肉”を意識すると効果が出やすい。歌う前の30秒〜1分だけでも、声の抜けが驚くほど変わる。
顔まわりのマッサージはストレス解消にも効果的!詳しくは下記の記事で。

7.リップロール
リップロールは、唇を「ブルルル…」と震わせる発声法で、音声科学で効果が実証されている SOVT(半閉鎖声道)」の代表トレーニング です。
声帯にやさしく、
- 喉の余計な力が抜ける
- 声帯が均等に閉じやすくなる
- 音程が安定しやすくなる
- 高音が楽になる
というメリットがあります。
リップロールのやり方

- 唇を軽く閉じる
- 息を吐きながら「ブルルル…」と優しく震わせる
- 声を乗せて「ぶるるるる〜」と音階をゆっくり上下させる
- 10〜20秒 × 2〜3セット
唇の力を抜いて“自然に震える”感覚を大切に
8.ハミング
ハミングは「ん〜〜」と鼻に響かせる発声。声帯の負担が少なく、ウォームアップに最適です。
ハミングを行うと、
- 声が前に飛びやすくなる
- 喉の力みが減る
- 音程が安定する
- 声の響き(レゾナンス)が整う
という効果が得られます。
ハミングのやり方
- 口を閉じ、軽く微笑むような形にする
- 鼻にかすかに振動が来る程度の声量で「ん〜〜」と出す
- 音程を上げ下げしながら10〜15秒続ける
- 2〜3セット繰り返す
顔や肩に力を入れず「ほほえむような顔」で行う。喉ではなく“鼻の奥が軽く振動する”感覚がポイント。
9.リズム訓練
歌が不安定に聞こえる原因の多くは、実は「音程」ではなくリズムのズレです。音楽認知の研究でも、リズム感が高いほど歌唱が安定することが報告されています。
リズム訓練は、
- 歌が走る・遅れるを改善
- 声の入り出しが安定
- 全体的に「まとまりのある歌」になる
という効果があります。
リズム訓練のやり方
- メトロノームに合わせて手拍子(ゆっくりのテンポから)
- 足踏みをしながら歌う
- 歌のリズムだけを声に出して確認する(「タ・タ・ター」など)
メトロノームはYouTubeの動画やアプリを活用しましょう。
10.声帯の湿潤管理(水分・加湿)
声帯は“粘膜”なので、乾燥すると振動が悪くなり、声が出にくい・かすれる・高音が苦しいなどのトラブルが起きやすくなります。
適切な湿潤管理は、歌う前のもっとも重要な準備のひとつです。
湿潤管理の方法
- 常温の水をこまめに飲む(少量を頻回に)
- 加湿器を使って部屋を40〜60%に保つ
- 乾燥が強い時はスチーム吸入(電子レンジで温めたマグの蒸気など)
一気飲みはダメ。少しずつの方が声帯が潤う。カフェインは喉が乾きやすいので控えめに。朝の乾燥対策として「ぬるま湯」を飲むのも効果的
まとめ|歌が上手くなる鍵は「身体」「呼吸」「声の準備」の3つ
歌が上手くなる近道は、喉だけを鍛えることではありません。
体幹・姿勢・呼吸・口や舌の柔軟性を整えることで、声が自然に出やすい身体がつくられます。
今回紹介した10の方法はどれも簡単で、続けるほど声の伸び・安定感・高音の出しやすさが変わります。
まずは “できるところから1つ” 始めてみましょう。
あなたの歌は必ず変わります。
参考文献
- Effects of semi-occluded vocal tract exercises on voice production
- Assessment of diaphragmatic function and its role in respiratory control
- Relationship between posture and respiratory mechanics during phonation
- Role of suprahyoid muscles and tongue position in vocal tract shaping
- Influence of hydration on vocal fold physiology
- Effects of rhythmic training on auditory-motor synchronization and vocal accuracy
- Impact of cervical and shoulder muscle tension on phonation
- Influence of lip and jaw relaxation techniques on vocal efficiency
- Acoustic characteristics of humming and its effect on nasal resonance
- Core muscle activation patterns associated with breath support in singing


コメント